姉妹が作るおばんざいと蕎麦
【うきわ】吹田市・江坂
いろんな飲食店が入るビルの3階にある小さな店は、「本日のおばんざい」と書かれた黒板やカウンターに並ぶ洋酒のボトルがなければ、まるでスタイリッシュなカフェのよう。明るい姉妹が迎えてくれて、初めて訪ねた時から家庭料理と珍しい酒に酔いしれた。
肌寒い夕暮れ、麦焼酎のお湯割りを頼むと、焼酎とお湯が別々の器で出てきた。「ご自分の好みで割ってください」と店主の大和田久美子さん。酒飲みの心をわかってくれてる!と、ここでまずハートをつかまれた。おすすめのおばんざい5種盛りは、黒板のメニューから好きなもの5つを選ぶ。蓮根ハンバーグ、芋煮、サゴシの煮付け、豚肉とニラのキムチ和え、三つ葉と蒸し鶏の薬味和えと、生姜味やら酸っぱい味やら、いろんな味をいただくことにする。濃いめに作ったお湯割りを飲みながらひと口食べるごとに気持ちがリラックスしていく。
ネーミングに惹かれて注文した日本酒は、メガネをかけた蔵人だけで造ったという「メガネ専用」。ふわっと甘いお酒に、「丸干しイカの炙り焼き」 のワタが入った丸干しイカの濃厚な味。仕事で新潟に行く度に、現地で必ず食べ、自分へのお土産に買い求めている大好物だが、粒マスタードを付けて食べるのは初めてだ。
ずっしり重い錫製のぐい吞みは富山の能作のもので、お皿は瀬戸の作家もの。そういえばさっきの器も手に馴染むいいものだった。久美子さん自身が器好きで、毎年9月には店でうつわ展をするそう。惜しかった、その時に来ていれば……。
日本酒の銘柄を選ぶのは久美子さん。自身は純米を熱燗で飲むのが好きというが、店のラインナップはいろんなお客さんの好みに合うように、バランスよく揃えている。そして、毎日10食分だけ蕎麦を打つのも彼女だ。北海道産の蕎麦粉を使った二八蕎麦は、つるりと喉ごしよく、お酒のあとに食べるとすっきりする。
お酒と蕎麦は久美子さん、おばんざいは妹の理津子さんと、姉妹で役割分担しながら、まる6年が過ぎる。2人が生まれ育った地元で、口コミで静かに広がってきた店は、料理、お酒、そして雰囲気も含めて、訪れる人をリピータにしている。
◆ MENU
生ビール 580円
焼酎 500円〜
日本酒グラス 580円~
おばんざい5種盛り 1080円
丸干しイカの炙り焼き 600円
自家製手打ち蕎麦 680円
◆ Data
おばんざいとお酒 うきわ
電話:06-6170-5107
住所:大阪府吹田市江の木町3-11 第3ロンヂェビル3F
営業:17:00~23:30
休み:日祝
◆ Writing / 松田きこ
(株)ウエストプラン代表。兵庫県西宮市在住。食・観光・人物取材に日本中を飛び回る。ライター歴20年以上。編著書「神戸・阪神間 おいしい酒場」「くるり西宮・芦屋・東灘・灘」「くるり丹波・篠山」他
http://www.west-plan.com/